感染に応じて遺伝的多様性を増大させる
今週のゼミで私が取り上げた論文。
Fruit flies diversify their offspring in response to parasite infection.
Nadia D. Singh, Dallas R. Criscoe, Shelly Skolfield, Kathryn P. Kohl, Erin S. Keebaugh, Todd A. Schlenke
Science 14 August 2015: Vol. 349 no. 6249 pp. 747-750
病原体に対抗するには子どもの遺伝的多様性が大きい方がいい。そのなかから生き延びる個体が存在する可能性を増すことができるからだ。
有性生殖をすると父方と母方のゲノムが合わさるだけでなく減数分裂の際に組み換え(交叉)が起きるから子孫は遺伝的に多様になる。
今回の論文では、キイロショウジョウバエに微生物を感染させたり、寄生蜂を寄生させたりすることにより組み換えが起きた子の割合が有意に増えるという現象が報告されている。その仕組みなのだが、組み換えの頻度が上昇するというわけではなく、メスの減数分裂時に、組み換えが起こった細胞がわずかに優先的に卵子になるというものであることがわかったのだ。[注:オスにおける減数分裂では2回の分裂によって4つの精子ができるが、メスでは2回の分裂によって1つの卵子と3つの極体が作られ、極体は退化し消滅する。つまりメスの減数分裂ではどの細胞が卵子になるかにおいて選択の余地が残されているといえる。]
それにしてもどうやってメスは組み換えが起きたものと起きなかったものを見分けているのだろうか。そのメカニズムは謎に包まれているが、とても面白い現象であると思う。
ハエを掛け合わせて子どもの数を数えるだけでこのようなことを明らかにしたというのもすごい。