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昆虫と微生物の研究とアート

睡眠時間は重要らしい

睡眠は我々にとって非常に身近な存在である。ところが、睡眠の存在意義については、いまだ統一的な見解はないらしい。今回、睡眠の長さや効率が風邪の引きやすさに影響を与えるという研究論文が出ていたのを、たまたま目にしたので紹介する。

Cohen S, Doyle WJ, Alper CM, Janicki-Deverts D, Turner RB (2009) Sleep habits and susceptibility to the common cold(風邪に対する感受性と睡眠). Archives of Internal Medicine 169: 62-67.(リンク)

要旨:この研究では、風邪のウイルスにさらされる前、2週間における睡眠の長さと効率が、風邪のかかりやすさに影響を及ぼすかどうかが調べられた。この調査には、153人の健康な男女(年齢21−55歳)に被験者としてボランティアで参加してもらい、14日間続けて前日の睡眠時間と効率(本当に眠っている時間の割合)と休まったと感じたかどうかを報告してもらった。その後、被験者に風邪のウイルス(rhinovirus)を含む点鼻液を投与し、風邪を引いたかどうかを客観的に診断した。その結果、平均睡眠時間が7時間より短い人は、8時間以上の人に比べて2.94倍風邪にかかりやすく(95%信頼区間:1.18-7.30倍)、睡眠効率が92%より低い人は、98%以上の人に比べて5.5倍風邪にかかりやすいことがわかった(95%信頼区間:2.08-14.48倍)。この関係は、ウイルス暴露前の体内に存在する抗体の量、体重、精神状態、健康状態など睡眠以外の要因では説明できなかった。また、休まったと感じた日の割合は風邪とは関連がなかった。このことから睡眠の効率が悪かったり睡眠時間が短かったりすると、風邪にかかりやすくなるといえる。


少し引っかかるのは、この実験でウイルスを接種された被験者がボランティアによってのみ集まられているという点だ。つまり、ちょっと風邪を引いたぐらいどうってことはないくらい体の丈夫な人のみが被験者となっているのではないかと思ってしまう。(もちろん人間を対象とした研究では倫理的な問題があるため、サンプリングに偏りが出てしまうのは避けられない点だとは思うが・・・)

いずれにせよ、この実験で用いられた153人のデータを見ると、睡眠時間は風邪の引きやすさに大きな影響を与えているようだ。自分が風邪を引いたときのことを思い返してみても、睡眠不足が続いた後であることが多い気がする。時々、睡眠時間が3時間や5時間でも常に健康な人がいるが、そのような人はその人本来の免疫力が一般の人より桁違いに高く、その高いレベルから少々免疫力が落ちたところで何の問題にもならないのかもしれない。

一般には睡眠と脳の機能との関連が注目され多くの研究がなされているが、この研究のように睡眠と免疫力とを関連付けた研究は少ない。