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ショウジョウバエの性決定 X:A説について

MURさんに教えていただいた論文

  • Erickson JW, Quintero JJ (2007) Indirect Effects of Ploidy Suggest X Chromosome Dose, Not the X:A Ratio, Signals Sex in Drosophila. PLoS Biol 5(12): e332. doi:10.1371/journal.pbio.0050332

この論文が出ているのを知らずに、ショウジョウバエの性決定はX染色体と常染色体の数の比によって直接決められていると思っていた。

この論文によると、どうやらX染色体と常染色体の数の比(X:A説)ではなく、X染色体の数とploidy level(何倍体であるか)との関係で性が決まっているようだ。

実際には

XX AA(2n)はメス
XY AA(2n)はオス
X A(n)はメス
XX AAA(3n)は間性 

 というように、X:A比と性決定に関連があること自体は、昔から変わっていない。 

つまり、結果的にはX:A比によって性が規定されるわけだが、その仕組みが従来考えられていたようにX染色体上のnumerator(分子)とよばれる遺伝子群と常染色体上に存在するdenominator(分母)と呼ばれる遺伝子群の相互作用によって性が決まるわけではなく、X染色体上の遺伝子産物量の量のみによって決まるという(十分に存在するとメスになる)。

なぜ、それだけの仕組みで

XX AA(2n)はメス
XY AA(2n)はオス
X A(n)はメス
XX AAA(3n)は間性

が説明できるのだろうか。実はcellular blastoderm(細胞性胚盤葉)になるまでの分裂回数がploidy levelによって異なるらしく、それが半数体(n)だと1回多く、3倍体(3n)だと少し少ない。つまり半数体(n)ではX染色体上の遺伝子産物量が2倍になることにより2nのメスと同量になるためメスになり、3倍体では、X染色体上の遺伝子産物量が2nのメスより少なくなることによって間性になるということのようだ。