タンパク質分解酵素を使わないDNA抽出
純度の高いDNAが必要ではないときは、よくProteinase Kとよばれるタンパク質分解酵素で細胞や組織を処理し、遠心したあとの上清を用いることが多い。
Looke M, Kristjuhan K, Kristjuhan A (2012) Extraction of genomic DNA from yeasts for PCR-based applications. BioTechniques 50: 325-328.
この論文では、タンパク質分解酵素のかわりに酢酸リチウムを使ってDNAをとる方法を紹介している。プロトコールは以下の通り。
- 100 μl の酢酸リチウム・SDS溶液(200 mM 酢酸リチウム; 1% SDS)の中でサンプルをすり潰す
- 70℃で5分
- 100% エタノールを300 μl 加え、ボルテックス
- 15000 rpm で3分間遠心し、ペレット以外を捨てる
- 70% エタノールでペレットを洗う
- 100 μl の水あるいはTEバッファーでペレットを溶かし、15000 rpm で15秒遠心
- 上清をPCRに用いる
キアゲン社のDNA抽出キット(DNeasy)を使ってもうまくDNAがとれない虫があって困っていたので試してみることにした。
(1と2:Proteinase K入りのバッファー内ですりつぶし、温度処理、遠心後、上清を使用/3と4:今回の方法/5:キアゲンのDNeasyによる)
DNAがとれたかどうかは、ミトコンドリアDNAがPCRで増えるかどうかで確認した。上の泳動写真からわかるように、見事に酢酸リチウム法だけうまくいっている。
エタノール沈殿自体に効果があったのかも知れないと思い。Proteinase K法とLiOAc法をどちらもエタノール沈殿を含めてやってみた。
エタノール沈殿によりProteinase K法は改善されたものの、増えないサンプルは増えない。一方、LiOAc法ではどのサンプルも安定して増えている。
このことから、Proteinase KではなくLiOAcを使った方がうまくいくと思っていたのだが、よくよく考えたらSDSの効果かもしれない。LiOAcを使ったときだけSDSを使っていたのだ。
後日どちらの方法にもSDSを入れてやり直してみることにする。