寄生性のガン
イヌ可移植性性器肉腫(Canine Transmissible Venereal Sarcoma; CTVS)
変な名前がついているが、要するに伝染性のガンだ。読みやすいようにスペースを入れると、「イヌ 可 移植性 性器 肉腫」となる。イヌ科において発生し、主として交尾によって伝染するらしい。特に性器に症状が出ることが多いという。
ふつう、ガン細胞は宿主から離れるとすぐに死んでしまうが、このガン細胞は別個体に移ることができる。
イヌとオオカミの祖先において、一個体で生じたこのガン細胞が延々と他個体に移りつづけて現在まで生き続けている。HeLa細胞は、人(研究者)の手を借りて研究室で繁栄を誇っているが、この細胞は独力で、宿主に迷惑をかけながら自然界で生き続けている。究極の利己的振る舞いだ。
- Murgia et al. (2006) Clonal origin and evolution of a transmissible cancer. Cell 126: 477-487
- Rebbeck et al. (2009) Origins and evolution of a transmissible cancer. Evolution 63: 2340-2349.