成長や成熟に柔軟性を与える遺伝子
今週のセミナー(文献紹介)で題材にした論文。ショウジョウバエの論文を隅々まで読んだのはちょっと久しぶりで準備が結構大変だったけど、とても勉強になった。
Imaginal discs secrete insulin-like peptide 8 to mediate plasticity of growth and maturation. by Garelli et al., Science 336, 579-582 (2012).
体の一部に怪我や腫瘍ができ、その部分だけ成長が遅れると、いびつな形に育ってしまい、非常に危険であるが、実際にはそのような場合、体全体で発育スピードがコントロールされて正常な発育が起こると考えられる。
この研究では、体全体に何らかのシグナルが巡っているだろうという仮定のもとにマイクロアレイを行い、腫瘍が原因で発現量が増加した遺伝子について様々な角度から解析することにより、「怪我や腫瘍などができたとき、インスリン様ペプチドの1つであるDILP8が分泌され、それがエクダイソンの生合成を阻害し、変態を遅らせることによって成長を遅らせている」ということがわかった。成長が遅れないと死亡率がぐんと上がることも示されている。
つくづく生き物ってよくできているなあと思う。
同じ号に別の研究グループによるほぼ同じ内容の論文が続きで出ている。
Secreted peptide Dilp8 coordinates Drosophila tissue growth with developmental timing. by Colombani et al., Science 336, 582-585 (2012).